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本郷顧問連載コラム:Vintage Sake (全33回)
第21回:米麹で造る甘酒の機能
長期熟成酒研究会顧問 本郷信郎
2011年04月01日(金)
カレーに合う酒、あるんですよ。熟成古酒の濃熟タイプの酒はより多くの風味成分「ソトロン」を持ち、味の“主役”を務めている。このソトロンを3千倍に薄めてもまだまだ味は残るといわれる。これを煮詰めていくとカレー風味になってくる。
熟成古酒のブレンドによって「新しい酒」の創造を楽しむ時代となり、熟成古酒を1.5%ほど加えることによって、ブレンド酒の“核”をつくることが出来る。
アルコール度数ゼロのビールがもてはやされるようになり、清酒の低アルコール酒のポイントはこのソトロンにあると思われる。熟成古酒は昔から、二日酔いがなく、醒めやすいといわれる。熟成古酒に含まれ、3千倍に伸ばしても酒の味を残す、このソトロンの活用が当然に考えられる。
米麹で造られる甘酒の機能性は素晴らしい。「現代の点滴」といわれ、江戸時代の夏場に盛んに体力保持の為に飲まれ、俳句の夏の季語にもなっている。その甘酒が本州の南地域を主体に、静かなブームになっている。それは米麹の酵素アスペルギルス・オリゼの効用が素晴らしいから。
米麹づくりには“うるち米”を用い、甘味を出す為に“もち米”を加えると、二昼夜50度前後で糖化する。そのままでは甘すぎるが、その後の保存性を考えると、これを薄くして飲むとか、少量を入れて味を調えた方が場所も取らず、より便利に使える。
市販のピカピカ輝くスルメイカを材料に塩辛にする。ワタは多めが良いので1、2ハイ多く買い求め、ワタのみを使用する。本体は刺身または調味した酒粕に漬けて食べ、イカの塩辛にこの甘酒、とうがらし粉、ゆずの皮を千切りにして入れる。甘さ加減は好みで調節。熟成古酒の濃熟タイプ、中間タイプの肴としてよくマッチする。酒はなくとも、そのままで炊きたてのご飯にも。その美味しさたるや、絶品である。
秋には、丸い小ナスを塩漬けにした後、漬け汁から上げてこの甘酒で漬け替える。即席とはいかないが、冷蔵庫の中で出来る酒の肴。これもアツアツのご飯が欲しくなる。漬物といえば秋田名産の「いぶりがっこ」も熟成古酒にはよく合う。
淡熟タイプの熟成古酒には、この甘酒を使って、サケの身とイクラを漬け込んだものが相性が良い。秋の北海道やサケの揚がる東北等の北の田園がよみがえる。麹の機能性を和食に利用することは、我々の祖先が会得した技術といえる。最近、この麹を利用した和食が話題に上がっている。
江戸時代に大いに好まれた熟成古酒。それは口内に食を運んだ時に出来る純米酒の圧迫感を和らげる力を持っているが、現代の和食にマッチする酒でもある。
(Kyodo Weekly 2009.12.14号掲載)