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本郷顧問連載コラム:Vintage Sake (全33回)
第22回:正月のおいしい発酵料理
長期熟成酒研究会顧問 本郷信郎
2011年04月04日(月)
塩分を調整したカズノコを小さくちぎって調味した練り粕に3、4週間漬ける。歯の弱い人でもプチプチ感が楽しめ、美味しくいただける一品。練り粕で漬けるスジコ、タラコ…。サケとイクラの酒粕漬けも美味。日持ちも良い。
野菜では長芋などのイモ類、エシャロット、ラッキョウ、ミョウガ等。玉ネギは新玉の出る5月に半分に切り、2週間塩漬けした後、黒砂糖等で調味した練り粕漬けに。10月に取り出して、最終調整した新たな練り粕に再び漬けて12月にいただく。血液をサラサラにするといわれる玉ネギとコメ成分のポリフェノールを採って、習慣病に気配り。
清酒だけで煮るのは、この季節のアンコウの肝。肝を良く水洗いし、水分を十分取って、美味しい食塩にまぶし、冷蔵庫で30~40分間塩分を整えて、後は清酒で煮詰めていく。寒冷地ではコイを清酒、醤油、みりんを入れてコトコト煮て、骨まで食べられる甘露煮に。
もち米を主体とした甘酒は牛乳に入れて飲んでも、良く調和する。お酒の飲めない人や子どもたちも正月の楽しみを分かち合える。
この甘酒を使って白菜漬け。白菜を4分の1に切って水洗いして半日ぐらい陰干しに。水が切れたところで唐茄子を入れて塩漬けにする。水があがったら、甘酒、唐茄子、ゆず皮で漬け込んで冷蔵庫で保管すると、1週間ほどで食べごろとなる。首都圏は気温が高いので、漬け換えや保全の時間を出来るだけ短時間で処理するのがコツ。酸味が出てきたらキムチ漬けで楽しんでもいい。甘酒を多少追加してやると、辛味が和らぎ、子供でも好む味になる。
最近、甘酒を生キャラメルに加工して販売するメーカーも現れている。甘酒をミキサーにかければ、いろいろと用途が広がってくる。
清酒はそのまま多くの料理に使用されてきたが、新酒より熟成酒、熟成酒より多少苦味の出た熟成古酒を使うと面白い。いろいろなだし汁に加えれば、味に膨らみと風格が出る。そばつゆに熟成古酒を少々、マイタケ、豚肉、玉ネギ、そしてお揚げを入れて完成。アゴだしで作ることも。秋には天然ナメコが入ることもある。
酒を飲む機会が多い正月には、出来るだけ自然の澄んだ空気に包まれた里山の面影をしのびたいもの。
熟成古酒をお湯割りで6対4ぐらいの比率で割っていただく。これで薄い感じはない。きっと醒めやすい正月の楽しい酒になってくれると思う。お楽しみあれ。
次回は天然の山菜のほのかな苦味と燻製食品やチョコレートとの相性について。
(Kyodo Weekly 2010.1.11号掲載)