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梁井顧問連載コラム:熟成古酒の魅力(連載中)
第7回:熟成古酒の楽しみ方(2)
長期熟成酒研究会顧問 梁井宏
2012年09月05日(水)
3 料理と合わせる
ワインは一般的に「魚料理には白、肉料理には赤」といわれます。
一方、個性が少ない従来の日本酒は、どんな料理にでもそれなりに合わすことが出来ます。料理の味を邪魔しないからです。反面、酒と料理がぴったり合い、その相乗効果で味わいや風味がより広がるなど、酒と料理の相性効果を楽しむ幅は非常に少ないといえます。
しかし最近は、個性的な酒が増えてきて、どんな料理にも合うという訳には行かなくなり、せっかくの料理も酒も、両方をだいなしにするケースもみられ、料理との相性は重要な問題となってきました。
酒と料理の相性のよさには
1)料理が持つ特性と酒の特性がよく似ている「似たもの同士は相性がいい」という、相乗効果
2)個性の異なるのもがぶつかり合い、新たに「第三の味わい」を創造して共鳴、調和する、創造効果
という二つのタイプがあります。
ワイン総合研究所の藤原正雄さんが提唱する「冷旨系食材(鯵のたたきなど)には、冷旨系の酒(吟醸酒)」、「温旨系食材(ローストビーフなど)には、温旨系の酒(熟成古酒)」という、ピタピタ理論は1)のケース。ソムリエの田崎信也さんの「フランスの友達のソムリエたちとチーズを食べたとき、熟成古酒を出すと、今まで飲んでいたワインはなんだったんだ、というくらい、チーズとの相性は日本酒が抜群によい。淡熟タイプにはカマンベール、濃熟タイプには茶色の、すごいウオッシュタイプというように、熟成酒の色調と合わせた色のチーズがよい」という話は2)のケースです。
そしてその一番重要なポイントは香です。
熟成古酒に特長的な香物質である「ソトロン」は、「香の特長」の項でも書いたとおり、その濃度が濃くなるにしたがって、バニラ様→蜂蜜の香→黒糖の甘い香→カレー様と変化します。
これらの特長をよく掴んだ上で、熟成古酒と料理との相性のルールを知ると、その楽しみは数倍になるでしょう。