トップページ ≫ 連載コラム ≫ 第24回:ブレンド古酒にビックリ
本郷顧問連載コラム:Vintage Sake (全33回)
第24回:ブレンド古酒にビックリ
長期熟成酒研究会顧問 本郷信郎
2011年04月11日(月)
比較的”若い”熟成古酒に、濃熟タイプの古酒をブレンドする。これがうまかったー。
この酒は1979年、1995年、2005年のブレンドモノで、米の旨味をたっぷり味わえる優れものである。達磨正宗が昨年、2009本限定で出した酒である。流通市場では、1971年モノ1.8L瓶で70万円台の値が付くが、このブレンド酒はわずか2,625円の限定普及版である。
蔵元は合資会社白木恒助商店。東海道新幹線の岐阜羽島駅から長良川をさかのぼり、有名な鵜飼いの地を超えた岐阜市門屋門にある。創業は1831(天保2)年。地の中から浮上したような酒蔵がある。近くの門屋神明神社の境内には、1868(慶応4)年に献灯された酒樽形の石燈籠が残っている。昭和40年代より、濃熟型の熟成古酒の復元を最も早く安定させた。
優れたブレンド酒を造るには、数々の種類の熟成古酒を持つことと、優秀なブレンダ―が必要である。
達磨正宗のブレンドは、この蔵の次女滋里さん夫妻が中心となって進めている。彼女は岐阜大を経て、酒類総合研究所の短期研修から東京農業大学の聴講生となり、酒類生産学研究室で研鑽した後に蔵入り。夫妻で実勤し、その感触をつかんでいる。
滋里さんは、男の子2人を育てながら、研究会や座談会、時には料飲店で、現場の声を聞き、和服を持って世界を駆け巡る。英会話をマスターし、米国、イギリス、フランス、イタリア、最近はスペインでの国際料理大会にと、世界を見て、利いて、ブレンド酒を造っている。
2010年度版はどんな酒ブレンドされるか。その様子は自社のブログやメルマガで常時紹介されているが、今年の限定本数は2010本とか。遊び心も心を和ませる。
明治以降90年間のブランクから立て直す為には、それなりの時間と経験が必要だったが、今ここまで熟成古酒うがよみがえることが出来、伝統文化の完全な復元を味わえる時代に入りつつある。濃熟型の年代モノが微量でも、ブレンドによってこれほど比較的年数の若い酒を引き締め、調和と風格を与えるものかと驚く。
720ml瓶での10年古酒、20年古酒もブレンド主体で生産されており、2009年のロンドンでの”インターナショナル・ワイン・チャレンジ”での日本酒部門でのゴールドチャンピオンも熟成古酒のブレンド酒であった。ソトロンと名づけられた旨味成分は3000倍にしてもなお、旨味が残る。その味の活力を改めて知った。
次回は熟成古酒の香りについてお伝えしたい。
(Kyodo Weekly 2010.3.8号掲載)