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本郷顧問連載コラム:Vintage Sake (全33回)
第32回:伸長する清酒の輸出
長期熟成酒研究会顧問 本郷信郎
2011年05月06日(金)
国内、昨年7月から今年6月までの1年間の清酒の課税移出は62万582キロリットルで、5年前と比べて11万5973キロリットル減少である。その国の伝統の酒は、いずれも減る傾向にある。
1956(昭和31)年度には4135あった日本酒製造免許場数は1944まで激減、実際に稼働しているのは1300程度となっている。2009(平成21)年度の生産量は62万582キロリットルで、約35年前の1973年度176万6111キロリットルの35%になっている。
一方、2000年の清酒輸出は7417キロリットルだったが、2009年の1万1949キロリットルの161%。1リットル当たりの平均単価も406円から601円となり、次第に、数量とも高級酒に移る状況が出てきている。今年1~8月の数値は8706キロリットルで、5年前の137%。1リットル当たりの平均単価は612円で、5年前の104%。この円高の中での成績である。2000年47ヶ国、2004年49ヶ国、今年1月~8月で47ヶ国に輸出されている。
和食は健康食として注目を集め、その伸びは日本酒にも通じ、米国が輸出全体の27%を占め、1リットル当たり平均単価も900円に近い。英国、オランダ、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、ブラジル、オーストラリア等への輸出も順調に伸びている。近年、最も伸びが目立つのは韓国。さらには中国、台湾、香港、ベトナム等東南アジアへの輸出も増えている。これ等も和食の伸びと関連していると思われる。
しかし、例えば米国を見てもワインと比べれば、清酒の輸入量はまだまだ少ない。もっと伸びる余地を十分に残しているという。
輸出を多く手掛ける東北のある会社は21ヶ国に輸出し、パリにはオール麹の酒、米国には大吟醸の熟成古酒とオール麹の酒を出している。新潟の会社は8ヶ国に輸出し、熟成古酒をドイツ、香港、シンガポールに。今年9月、ロンドンで開かれた世界の酒類審査会の熟成古酒部門でグランプリを獲得し、最近、台湾でこの酒の試飲が大きな評価を得たという。
また、中部地方の会社は、輸出するのはすべて熟成古酒で、5ヶ国に輸出。米国には純米古酒を10年ぐらい前から輸出し、昨年秋のスペインでの世界料理大会にも出品している。輸出先は熟成古酒に何の抵抗もなく、市場はそのまま受け入れている。九州の会社は、9ヶ国に輸出し、1ヶ国に熟成古酒を輸出していた。熟成古酒の話題が多い国は、ノルウェーであるという。
次回は、日本へ来る来賓への接待に使う酒について報告する。
(Kyodo Weekly 2010.11.8号掲載)