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本郷顧問連載コラム:Vintage Sake (全33回)
第33回:もっと日本酒のPRを!!
長期熟成酒研究会顧問 本郷信郎
2011年05月09日(月)
内閣総理大臣揮毫の額が清酒メーカーの事務所や蔵に掛けられている。国会議員の「励ます会」やパーティーに顔を出すと、清酒の姿はない。「清酒はあるの」と聞くと「今用意いたしますから」と、時間をおいて燗酒が出てくる。各地方の酒造家は資産家が多く、町の有名人である場合が多い。経済的に割高になる。
谷公一衆院議員は今年4月、「宮中晩餐会等において用いられる酒類に関する質問主意書」を提出。これに対し、当時の鳩山由紀夫首相名で、外務省、在外公館での会食や晩餐会での乾杯の際に使用する酒についての回答書が出された。
それによると、外務省本省が平成17~21年度の5年間に購入した日本酒の本数は737本。金額にすると190万9927円だから、1本当たり2,591円。これに対し、ワインの購入本数は2500本。金額にすると1367万3181円だから、1本当たり5,469円。主要国首脳会議参加国に所在する日本国大使館では、日本酒1684本、732万8285円、平均価格4352円。ワイン1万9535本、5436万6024円、平均価格2,783円となっている。
最も知りたい、国賓・公賓等が来日した際に天皇皇后両陛下が催される晩餐会や歓迎会の他、日本国内で開催される主要国首脳会議等の会食時の酒類に占める日本酒の割合が明確になっていない。
各民族の伝統ある酒類についての知識が不足しているのではないだろうか。鎌倉時代から江戸時代に栄え、明治、大正、昭和の初めに造石税で消えてしまった熟成古酒だったが、戦後、復活している。
1990年ごろ、ソムリエの田崎さんとフランスに出掛けた折には、メーカー流通業者の食事の席で25年前の濃熟タイプの古酒を使って、起立、献杯の礼を行ってくれた。
2001年には、日本の清酒メーカー5、6社が自社の大吟醸・熟成古酒を持参し、フランス・モナコのワインメーカーが経営するレストランで「利き酒会」を開催した。「穀物が原料でなぜこんな香りが出てくるのか」「樽熟成でもないのにどうして発色があるのか」。濃いルビー色の熟成古酒に対する質問は絶えなかった。そして、ロマネ・コンティの工場も見学したのだった。
酒造会社、ワインメーカー間では、互いにその良さを認め合って研鑽している。日本の接待担当者よ、まずビックリするような良い熟成古酒を飲んでもらいたい。我々の先達が楽しんだ伝統文化を研究してもらいたいものだ。
次回は、日本酒の伝統的熟成を促す日本の麹菌・アスペルギルス属オリゼの製造を紹介する(本稿が本郷顧問の生前最後のコラムとなりました)。
(Kyodo Weekly 2010.12.13号掲載)